「もりそば」と「ざるそば」と「せいろそば」はそれぞれ何が違うの?驚きの事実!

言葉の違い

蕎麦屋で時々起こる小さな混乱。

「これ、せいろそばじゃないの?」と思わせる、蒸籠で提供される「ざるそば」や、見た目では「もりそば」と区別がつかないものなど、メニューを見ても想像しにくい蕎麦が出てくることも。実際、これらの蕎麦の違いは何なのでしょうか?そもそも違いはあるのでしょうか?

「もりそば」「ざるそば」「せいろそば」のそれぞれの背景や歴史を振り返りながら、これらの蕎麦の違いについて詳しく解説します。

 

1.「もりそば」「ざるそば」「せいろそば」の違いを解説

一般的に見られる蕎麦の違いを簡潔に説明します。

 

「もりそば」と「ざるそば」の主な違いは価格で、ざるそばの方がやや高価。これは主に海苔の有無によるもので、価格差はおよそ50~100円です。

「ざるそば」と「せいろそば」は、提供される器の違いです。ざるそばはざるに、せいろそばは蒸籠で提供されますが、ざるそばが蒸籠で出されることもあります。

「せいろそば」と「もりそば」には実質的な違いはありません。同一店舗で両方を提供することはほとんどなく、どちらか一方の名称を採用するのは店舗の方針に依存します。

 

それでは、これらの蕎麦がどのようにして誕生し、どんな背景があるのかを見てみましょう。

1-1.「もりそば」の起源

「もりそば」は三種の中で最も古く、江戸時代中期に誕生しました。

当時一般的だった「そば切り」スタイルから、「ぶっかけそば」の流行により「もりそば」という名称が登場しました。

この名称変更は、「そば切り」と「ぶっかけそば」との混同を避けるために行われました。

1-2.「ざるそば」の誕生

「ざるそば」は「もりそば」から派生した形態で、東京の深川の洲崎にあった「伊勢屋」が創始者です。

当初は竹ざるを使用していましたが、出前の実用性を考慮し、やがて蒸籠に戻りました。

「ざるそば」の特徴は、そば汁の濃厚さとコクにあり、特別な「御膳かえし」が使用されていました。

明治時代には、「もりそば」と比べて「ざるそば」がより高級な扱いを受けるようになりました。

1-3.「せいろそば」の起源

「せいろそば」は蒸籠を使用していた歴史を持ちますが、現代では「もりそば」の一形態として位置づけられています。

江戸時代の終わり頃、蕎麦屋が値上げを求めた際、幕府は器の底を上げることを提案しました。

これにより、底が高く見た目が山盛りの「もりそば」が「せいろそば」として定着しました。

名称の変更はマーケティング戦略として行われたとも考えられています。

 

2.「もりそば」「ざるそば」「せいろそば」の具体的な歴史と違い

これらの蕎麦にはそれぞれ独特の歴史があり、その違いを時系列で見ていきましょう。

2-1.江戸時代の始まり

当初の蕎麦は「そば切り」として知られ、つけ麺のように、別皿で提供された蕎麦をつけ汁で食べるスタイルでした。

2-2.江戸時代中期の変革

「ぶっかけそば」の流行が「もりそば」の登場を促しました。これは「そば切り」との区別をつけるためでした。

深川の伊勢屋が「竹ざる」を使って蕎麦を提供し、「ざるそば」として人気に。ただし、出前の便利さのために後に「蒸籠」に戻ります。

この時、「ざるそば」に海苔を乗せることが流行り、そば自慢の濃いつけ汁は廃止され、「海苔」がトッピングとして定着しました。

2-3.江戸時代末期の進化

蕎麦屋が値上げを求めたが、幕府に却下される。代わりに蕎麦の量を減らす提案がなされ、「せいろそば」が誕生しました。

2-4.現代における違い

一部の老舗では依然として「ざる汁」を特別に提供していますが、一般的には「ざる」「もり」の違いは海苔の有無、「せいろ」「ざる」の違いは器か海苔の有無、「もり」「せいろ」ではどちらか一方がメニューに採用され、両方が同時に存在することは稀です。

2-5.海苔の使用の意味

海苔は元々蕎麦の香りを消す可能性があるため、蕎麦の香りが比較的弱い時期に香りを補うために使用されたという説があります。

蕎麦自体は栄養価が高いものの、他の栄養素が不足しがちで、海苔はその不足分を補う役割を果たしていました。また、そば汁との相性も良かったため、よく考えられたトッピングとして使用されています

 

3.「もりそば」「ざるそば」「せいろそば」の違い、複雑な歴史

蕎麦はその長い歴史を通じて、多くの変遷を経てきました。今日、蕎麦屋で「カレーか、それともそばか」と迷う時、実はその選択肢には深い歴史が潜んでいるのです(もちろん迷うのは自由です)。

現代では、「ざる」と「もり」の違いはほとんど海苔に集約されてしまい、「もり」と「せいろ」はメニュー上で同時に存在することはほとんどありません。

しかし、これらのスタイルが今も存在していることは、江戸時代から愛されてきた蕎麦の特徴を色濃く反映しています。

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