「おぼえる」と入力すると、漢字で「覚える」と「憶える」の二つが候補として出てきますね。日常的に使う言葉なのに、どちらの漢字を選ぶべきか迷う瞬間があります。
そこで、この二つの言葉の意味と使い分けについて深く掘り下げてみました。実は、「覚える」と「憶える」にははっきりとした意味の違いが存在しているんです。
この記事では、これらの言葉の意味の違いと正しい使い方を、具体例を交えて分かりやすく説明していきます。詳細な解説を用意していますので、ぜひご覧ください!
1.「覚える」と「憶える」の意味の違いについて
まずは、「覚える」と「憶える」の意味の違いについて解説します。
「覚える」は記憶に関する動詞で、「身につける・習得する」と「感じる」という意味も持ちます。対して「憶える」も記憶に関する動詞ですが、「身につける・習得する」「感じる」という意味合いは含まれません。
1-1.「覚える」の用法について
「覚える」には三つの用法があります。
「記憶する」とは、例えば「私は人の名前を覚えるのが得意」「円周率を20桁まで覚える」などの文脈で使用されます。
続いて「身につける・習得する」の意味では、「新しい技術を覚える」「新しい家電の使い方を覚える」などの表現で使われます。
最後に「感じる」という意味では、「嫌悪感を覚える」「恐怖を覚える」といった使い方があります。
1-2.「憶える」の意味とは
「憶える」は純粋に「記憶する」という意味を持ちます。
例えば、「円周率を20桁まで憶える」「私は人の名前を憶えるのが苦手」といった表現で使われます。「柔道で新しい技を覚える」「新しい家電の使い方を覚える」といった「身につける・習得する」や「感じる」を意味する文脈では使用しないことがポイントです。
ただし、「家電の使い方を記憶する」という文脈での「憶える」の使用は正しいです。
「憶える」の漢字「憶」は、「りっしんべん(心)」に「意」から成り立ちます。ここでの「意」は、「言葉(音)」になる前の「思い(心)」を指し、「憶」はこれを「心に留めて忘れない」という意味になります。
1-3.「覚える」と「憶える」の違いの整理
「覚える」と「憶える」はいずれも記憶することに関連しています。
共通点は、何かを「記憶する」ということですが、「覚える」には「身につける・習得する」「感じる」という追加の意味があり、これが「憶える」との大きな違いとなります。
2.「覚える」と「憶える」の辞書的解釈
「覚える」と「憶える」の辞書定義に関して、より深く掘り下げてみましょう。
2-1.辞書における「覚える」の定義
1 (「憶える」とも書く)見聞きした事柄を心にとどめる。記憶する。「子供のころのことは~・えていない」
2 学んだり経験したりして、身につける。習得する。「こつを~・える」「技術を~・える」
3 からだや心に感じる。「疲れを~・える」「愛着を~・える」
4 (古風な言い方)思われる。「お言葉とも~・えません」
5 思い出して話す。「いで~・え給へ」〈大鏡・序〉
6 自然と思い出される。ふと想像される。「昔~・ゆる花橘、撫子、薔薇(さうび)」〈源・少女〉
7 似る。似合う。「御かたちありさま、あやしきまでぞ~・え給へる」〈源・桐壺〉
8 他人からそう思われる。「この世の中に恥づかしきものと~・え給へる弁の少将の君」〈落窪・一〉
9 意識がはたらく。分別する。「物は少し~・ゆれども腰なむ動かれぬ」〈竹取〉
引用:weblio辞書
この定義は、前述した内容と一致しています。
2-2.辞書における「憶える」の記述
驚くべきことに、「憶える」は単独で辞書に載っていないことが確認されました。
「覚える」の項目に「憶えるとも書く」との記載があるのみです。
「憶」は常用漢字には含まれているものの、「おぼ(える)」としての読みは採用されていません。そのため、辞書に単独で記載されない理由になっている可能性があります。
しかし、常用漢字にないからといって使用が避けられるわけではなく、誤用でもありません。
3.「覚える」と「憶える」の具体的な使用例の違い
それでは、「覚える」と「憶える」の使い方を実際の例文で見ていきましょう。
3-1.「覚える」の使用例
- 彼女は新しい言語を覚えるのが得意です。
- 子供たちは詩を暗記して覚えることに挑戦している。
- 今日のレッスンで新しい単語をたくさん覚えることができた。
- 彼は仕事で使うコードを覚えるのに時間がかかった。
- 私は旅行のために簡単な会話を覚えることにしました。
- 彼女は新しい曲のピアノのメロディーを覚えるのが楽しみだ。
- このゲームを覚えるのは少し難しいけれど、とても面白い。
- 彼は昔の友人の顔と名前をすぐに覚えることができる。
- 私は毎朝、日課として新しい英単語を覚えるようにしている。
- 彼女は新しいレシピを覚えるために、料理教室に通っている。
3-2.「憶える」の使用例
- 彼女は子供の頃の楽しい思い出を鮮明に憶えている。
- その映画の感動的なシーンを今でもはっきりと憶えています。
- 彼は初めて海を見た時の感動をいつまでも憶えていた。
- 私は祖父が話してくれた昔話をいつも憶えている。
- 彼女はかつての友人との楽しかった日々を憶えている。
- その古い歌のメロディーを私は未だに憶えています。
- 彼は初恋の人の顔を今でも憶えている。
- 私は子供の頃に住んでいた家のことをよく憶えています。
- 彼女は初めての海外旅行での体験を鮮やかに憶えている。
- 私は祖母が作ってくれた温かい料理の味をいつまでも憶えている。
これらの例文を通じて、「覚える」と「憶える」の適切な使用法を理解することができます。
4.まとめ:「覚える」と「憶える」の違い
「覚える」と「憶える」の違いと使い方に関する解説を総括します。
「覚える」は、主に記憶に関連する言葉ですが、これには「身につける、習得する」という意味や、「感じる」という意味合いも含まれます。
一方で、「憶える」は、純粋に記憶に関する用語であり、「身につける、習得する」や「感じる」といった意味合いは含まれていません。
この違いを踏まえ、日常での適切な用語選択に役立ててください。